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2020年9月期 第2四半期決算説明会

2020.05.15

  続きまして、私安倉から広告事業の事業進捗TOPICSを説明させていただきます。まず、本田からもありました通り、昨今のコロナにおける状況変化が、社内各事業ドメインに良い方にも悪い方にも様々に影響を及ぼしております。総論としてはマイナス影響の方が大きいことは変わりありませんが、事業ポートフォリオの分散が奏功し、また昨年下期から積極的な事業整理を進めてきた結果、非常に筋肉質な組織体制への変革が完了していたということもありまして、そのマイナス影響の程度は限定的である、と考えております。

  こういった情勢のなか、広告事業としてどういったマクロを捉えているのか、長期的な見通しも含めた上で現在進めている仕込みについていくつか共有させていただきます。

インターネット広告がトップメディアに

  まず、昨今の広告業界におけるエポックメイキングな事象として、19年のインターネット広告市場がついに地上波テレビ広告市場を抜き去った、という出来事がありました。EC化率の上昇に紐づくパフォーマンス予算の継続的拡大に加えて、これまでテレビ広告をトップメディアとして活用してたブランド予算が、ユーザーのメディア滞在時間の変化に伴って、インターネット広告へ還流し始めており、このシフトは不可逆的なものと考えております。

OTT市場の成長とユーザー行動慣習の変化

  スマホの普及及びソーシャルメディアの浸透がひと段落した今、ユーザーのメディア滞在時間の変化、それに伴ったブランド広告主の環境変化を引き起こす次なるトリガーが、YouTubeをはじめとするOTT(Over-The-Top *動画や音声をインターネットを介して提供するサービス)市場の成長にあると考えています。コロナ禍におけるNetflixの急成長をみても、在宅ニーズが高まることがテレビへの回帰を一意的に促すものではない、ということは明らかで、ユーザーは在宅であってもインターネットを介したオンデマンドでの消費を好み、また5Gの普及がこの流れをさらに助長していくと考えています。

  特に最近は、これまでテレビで活躍されたアイドル、タレント、芸人、スポーツ選手のような著名人が相次いで YouTube上でアカウントを開設し、ソーシャルメディアを通じて、ファンと直接コミュニケーションを取り始め、そういったコンテンツ提供主側の変化もまた、デジタルネイティブ世代のみならずこれまでテレビの中心世代であった中年層のユーザーをテレビからインターネットへと引き込んでいくでしょう。

インターネット動画広告市場の課題

  インターネットを介した動画メディアと接触するユーザー、滞在時間が今後ますます伸びてくるなかで、また動画というフォーマット自体が、ブランド想起を人間の脳に深く印象を残す上でも最適なメディアフォーマットであることから、ブランド広告主がインターネット動画サービス上での広告出稿を年々積極化させていくのはごく自然なことではあります。

  一方でインターネット動画広告市場における大きな市場課題として、ブランド広告主が安心して、かつエンゲージメントをとるのに効果的なユーザー体験を伴って、かつスケーラブルにユーザーとコミュニケーションをとれる場所が非常に少なく、YouTubeをはじめとするごく一部の特定動画メディアに予算が集中し、選択肢が十分でないという課題があります。またその特定動画メディアに関しても、テロリズムを始め、犯罪行為を助長するような動画コンテンツや、フェイクニュースなどに意図せず広告が流れてしまうことが稀に発生してしまい、ブランドセーフティ観点でも大きな懸念を残しています。

フリークアウトグループの取組み

  そういった市場課題があるなかでフリークアウトグループとして、以下のように多面的にインターネット動画広告に関する広告技術開発を進め、より健全な業界の発展に貢献するよう広告技術開発に努めてまいりました。

①新規動画メディアの発展を共創し、安心してブランドコミュニケーションがとれる新しい場を提供していく広告技術開発
②特定動画メディア上でのブランドコミュニケーションをより安全に効率的効果的に実現させていく広告技術開発
③既存メディア内に動画コンテンツを自動生成し、動画でブランドコミュニケーションがとれる場をスケーラブルに増やしていく広告技術開発

  次のページ以降でひとつずつ上半期の事業進捗と合わせてご説明させていただきます。

①新規動画メディアの発展を共創し、安心してブランドコミュニケーションがとれる新しい場を提供していく広告技術開発

  民放テレビ局が連携した公式テレビポータルサイト「TVer(ティーバー)」と昨年より業務提携を結び、ブランド広告主にとっても健全な場としてご活用いただくよう、テレビCMの考査並みの非常に厳格なクリエイティブ審査を徹底し、TVer上での健全な広告エコシステム形成の基盤技術開発に努めてまいりました。3月にはMAU1000万を超え、累計ダウンロード数も2500万を突破し*、日本でも有数のOTTへと成長しております。
*TVer公表「2020年1-3月期 ユーザー利用状況」 https://tver.jp/info/notice/2976.html

    上半期については、そういった大きな事業規模を作っていくための基盤構築に最注力して開発を進めてまいりました。具体的には、入札数を最大化させるための DSP各社との接続、及びリクエスト数を最大化するためのインベントリーの拡充です。前者については、この上半期で、フリークアウト「Red」, 世界最大手DSP「The Trade Desk」及び国内主要DSP含む計5社との接続が完了しております。また後者につきましては、今週リリースもさせていただいたように、在京民放5社だけでなく、在阪放送局も含めて配信が可能となりました。

  Q2 対 Q1 でも売上が +200%成長と順調な立ち上がりをみせ、下半期に入り本格的に売上インパクトを作っていくというところでコロナ禍に入ってしまい、ブランド広告主が一部自粛モードに入ってしまいました。しかしながら、5月以降徐々に広告出稿における自粛モードも回復し、下半期の新たなインパクトのある収益源として期待しています。

②特定動画メディア上でのブランドコミュニケーションをより安全に効率的効果的に実現させていく広告技術開発

  関連会社SilverPushのYouTube含む動画広告サービス上で活用できる動画解析技術です。SilverPushでは、数年前よりTVCMの動画画像を解析して、インターネット上で TVCMと連動した広告配信をリアルタイムに可能にする「Parallels」というプロダクトをアジア各所でローンチするなど、動画画像リアルタイム解析のコア技術開発に注力してまいりました。社内では25名を超える AIエンジニアを抱え、コア技術に関する特許も7件取得しています。

  この「Parallels」で磨いた動画解析技術を、YouTube含む動画広告サービス上で、テキストベースではなく動画をベースにコンテンツを解析し、解析結果をトリガーとしてブランドセーフティや配信効率化を実現させたのが昨年ローンチした「Mirrors」です。動画内で話している聴覚情報をテキスト解析して、それをブランドセーフティに活用する技術はこれまでもありましたが、人間は聴覚情報よりも視覚情報の方が約8倍ほど情報収集量が高いといわれ、そのため視覚情報に基づくブランドセーフティが広く求められていました。

  「Mirrors」では、YouTubeのキーワードやタグでは拾えない配信トリガーや、ブランド特有の NG要件を、動画コンテンツ解析をベースに配信対象から削除したり追加することが可能になります。例えば、動画コンテンツ内に、自社及び競合製品が登場する動画に自社製品広告を配信するなどといった活用が可能です。これらのケースは、動画内にさりげなく自然と登場していることが多く、YouTubeのデフォルトターゲティングでは定義されていないことが多いため、通常では配信対象から除外されてるケースが多くあります。ブランドロゴや製品以外にも、タレントなどの特定人物、またその表情、サッカースタジアムなどの背景、など、幅広く定義付けが可能です。

  「Mirrors」の技術を使うことで、YouTube上でブラックボックス的に配信するのではなく、動画コンテンツ内に、確実に登場する何かをトリガーに配信設定、除外ができるようになるため、ブランドセーフティが強化されるのと共に、コンテンツマッチタイプの広告なので、ユーザー体験も改善されることで配信効果も高くなり、そのほとんどのケースで、デフォルトターゲティングによる配信と比べて視聴率(広告配信から視聴するまでの歩留まり)や配信視聴単価が改善されるという結果が得られました。

  自社での事業検証を経てパフォーマンスに確証が得られたことから、東南アジアにおいては「Paralles」と合わせて「Mirrors」もフリークアウトのセールスチームが専売していく体制をこの下半期に構築し、SilverPush単体としてはプロダクトの改善及びコア技術の新規開発に専念していきます。また、下半期に「Mirrors」の日本での展開も計画しており、こちらもフリークアウトホールディングがセールス組織の立ち上げから事業検証を全面的にサポートしていきます。

③既存メディア内に動画コンテンツを自動生成し、動画でブランドコミュニケーションがとれる場をスケーラブルに増やしていく広告技術開発

  ブランド広告主のインターネット動画広告需要の高まりから、TVerのような新規メディアだけでなく、ニュースメディアやバーティカルメディアのような静止画&テキスト中心の既存メディアでも、動画コンテンツを増やしてそこに動画広告で収益を拡大させていきたいというニーズは高まってきています。しかし、動画コンテンツを制作するのには新たに組織を立ち上げないといけなかったり、さらにはひとつひとつのコンテンツ制作にかなり時間を要するなど、収益性にみあったコストで動画コンテンツを大量に増やしていくということが非常に難しい状況です。

  そういったメディアサイドの課題にたいして、米国子会社のPlaywireが開発、提供している「Trendi」では、WEBサイト内の静止画とテキストを収集して動画コンテンツを自動で作成し、今ユーザーが読んでいる記事コンテンツをテキスト解析したうえで、関連した生成動画を記事の間、ないしは下部にて配信するプロダクトを提供し、メディアパートナーが容易に動画コンテンツを量産することが可能になりました。そして、その動画コンテンツに配信される広告枠をPlaywireが独占的に収益化支援をすることで、メディアにとってはエフォートレスに動画面広告収益を純増させることを可能にしました。

  Playwireはメディア動画枠に関するエクスクルーシブを得ることで広告主、代理店に対しての交渉力を高め、非常に収益性の高い事業モデルを展開することに成功しています。

  事業進捗に関しては、従前からご説明させていただいている通り、上半期でも4.3億円のEBITDAを稼ぎだすなど、時流を捉えた事業展開で今後も堅調な事業成長を期待しています。


  以上 3点は主に、"旧来の"インターネット上における取組みではありますが、IRIS社のようにオフラインをインターネット化して新しいインターネット面を創出し、広告主がそのトップメディアであるインターネットを通じて、安心、効果的、スケーラブルに動画広告配信できる面を新規開発していく動きもございます。フリークアウトグループとしては、様々なオフライン空間をインターネット化していく新規事業は今後もリリース予定です。

  5G到来とともに全てがインターネットで繋がる時代に、またブランドコミュニケーションの中心がオンライン化していく未来に対して、既存インターネット媒体上での課題を技術で解決していくことはもちろん、自らがオフラインをインターネットメディア化させていく新しい技術開発も合わせて継続してまいります。

  グループ内協業を通じて、新規事業にかかるリスクもヘッジしながら展開できるようになったのは、広告事業がグループとして一段登ってこれた結果だと考えております。下半期も、コロナ禍で引き締めるところは引き締めつつ、来るべき未来に対してはリスクを適切にヘッジしながら来期以降につながる新規開発を継続していく所存です。